宅建士の実務、調査の基本中の基本!どこで何を調査するのか
某企業では、宅建士に受かった新入社員に対して、「とりあえず現地を見てこようか」などと言うそうです。社会人としての経験は基本的には身についてきたので、一人前の宅建士に育て上げようと思い言っているそうです。
しかし、不動産取引初心者の新入社員は「???現地に行って何を見るんだ???」となることが多いです。
一般的に不動産調査には、下記の表にまとめた6つの調査対象があります。
不動産調査事項
1 | 当事者 | 依頼者、売主、買主、代理人です。①関係書類を受領する、②ヒアリングによって不動産の状況を教えてもらう。このヒアリングによって調査の全体的な方針が決まります。 |
2 | 現地 | 敷地内の環境を把握します。現地をみて、法務局、行政、ライフラインなどについて、 どのような調査をするかの方針を固めます。 |
3 | 法務局 | 法務局の出張所、本局にて調査します。証明書にはなりませんが、ネットでもある程度調査は可能です。主に権利関係の調査をしますが、同時に不動産の対象範囲や担保価値をつかみます。 |
4 | 行政 | 市区町村の役所、時には都道府県の役所にて調査をします。ある程度はネットでも調査は可能です。主に法律関係の調査をします。行政の調査は、調査方法によって結論が異なる場合があります。 |
5 | ライフライン | 上下水道の管轄行政庁、電気、ガスの各会社にて調査を行います。ネットやFAX経由で調査を行う場合もあります。 配管が届いているか、管径はいくらかをつかみます。 |
6 | 関係各所 | 税務署、鉄道会社、地主、借地人、マンションの管理会社などが主なところです。 マンションや借地底地など不動産の属性によって調査対象が変わってきます。調査する人の経験値によって答えが変わることがあります。 |
情報を多く集められる順番で調査を始める
答えから言いますと、1番から6番にかけて調査を進めていくのがいいです。
1.→2.→3.→4.→5.→6.
矢印で書くとそのままですがこんな感じです(笑)
1.2で調査方法を決め、3~6でその方針に基づいた調査をするという流れを作れるからです。
1.当事者と2.現地は得られる情報量が多いです。あえて、当事者を先行させるのは、当事者が私たちには見えない情報を沢山もっているからです。
一回実務であったのは、土地の下に大きな石がゴロゴロと埋まっているという話です。埋めた本人しか分からないようなことですよね。そのことを隠して売買しようものなら後々紛争に発展しますので当事者からのヒアリングはとても大切です。
3.の法務局は主に権利関係を調査します。当事者と現地を確認すれば事前にある程度は把握できますので優先順位は、1.2.の後になります。
4.行政の調査は法務局で取得する登記簿謄本や公図、測量図を使う場合があるので、3.の後になります。
5.ライフラインは、行政の調査の前後どちらでも構わないのですが、重要度で言えば行政の方が上ですので4.の後になります。
6.関係各所は他の調査の結果をふまえて、調査することが多いので最後となります。
実際、当事者が調査対象の不動産の事をよく知っていれば、確認と書類集めのみということもまれにあります。
住宅地図で調査の範囲と手順を決める
調査の際には、住宅地図を用意してください。該当不動産とその周辺が分かるものです。
地図を眺める際に4点思い浮かべてほしいことがあります。
大前提
1.依頼者の目的
詳細
2.該当不動産は使えるか
3.取引をしても安全か
4.担保にとれるか
※ここでは、抽象的に書いております。後ほど詳細は解説していきます。
この段階で不要な調査の割愛を検討していきます。例えば、不要となる調査の代表例が法務局での調査の一つ、「隣接住戸の一覧調査」です。
住宅の売買の際、住宅地図上のお隣が法人所有の場合は騒音やにおいの問題がないか調査をし予測、判断しなければなりません。
そのため、会社の謄本を取得して、「どういった業種なのか」「人の出入りはどれぐらい」などを調査する必要があります。
しかし、お隣が個人の場合は、住宅と利用していることが多いので謄本を取得して調査する必要はなくなります。
また、事業用で許認可が必要な案件などでしたら、物件の半径100メートル以内に学校や医療施設が無いかなど調べることもあります。現地を見るまでもなく地図で分かることはありますので積極的に住宅地図を活用しましょう。
<POINT>
何処から調査をしたらいいか悩んだら、情報量の多いところから調査していくのが基本中の基本です。